機械指令が施行され始めた1995年あたりではこれらの言葉はそれほど表に出るような存在ではなかったのですが、最近の紙面、ニュースでは「安全」、「安心」、「偽装」、「危険」、「リスク」と言った言葉を使った記事を多く見かけます。 普段の生活において、安全は「OK」と合図し、危険を感じた時は「危ない」と叫んでいることが多くありますが、ある人は「OK」でも、別の人は「危ない」と感じていたり、本当の「危ない」に気づかず「OK」と言っている場合もあるのかもしれません。 その状況に置かれた各人の経験や知識、感じ方によって異なる見方になるのが「OK」と「危ない」になります。
一つの事象の上に多くの「OK」が存在し、同時に「危ない」も混在しているのがこの世の中であり、自動車を例にすると、一般的にはとても便利で安心できる乗り物ですが、相手に追突される、うっかりミスで愛車や人を傷つけてしまうことがあります。 「OK」運転していることで同時に「危ない」にもつながっているのです。 包丁は調理用の道具ですが、うっかりミスでケガをしたり、たまたまの犯罪事件に巻き込まれてしまう場合さえもあれば、飛行機は短時間で移動できるから「OK」出発進行となりますが、落ちれば全員死亡の大惨事になります。 そのように考えると「OK」は「危険」の反対側面にあるのではなく、人の行動は常に「OK」を確認しながらも、とても少ない確率の「危ない」と共存していることになります。 たまたまの点在する「危ない」が偶然にも重なり合った時に、飛行機は落下し、工場は爆発し、列車は脱線してしまうのです。
安全を達成するにあたり、まずは法令や規格が要求している本質の理解から始めないといけないのですが、どの要求事項も単なる一文でしかありません。 単なる一文に対しての具体的対応は設計者のアイデアによって複数に拡大できることから、重要な事は実設計に展開できる発想力や創造力にあります。 法律は強制、規格は任意の位置付けであっても、法律上で規格を引用している制度では規格も強制事項と同等になります。 日本の機械安全の分野ではJIS規格をコントロールする法令が制定されていない事から、多くのJIS規格は任意扱いのままです。 しかしながら、グローバル化する国際社会において規格ベースの安全技術を駆使した安全先行型のものづくり体制を確立していかないと日本のものづくりは発展していかないのではないかと感じています。 安全はもはや優先順位ではなく、労働現場、社会、会社、製品における中核的価値であり、そのためには安全を会社のマネージメントシステムに取り入れて、トップダウンの采配とボトムアップの知恵によって日本の安全志向を明るい方向に展開していく事が今後の課題ではないかと考えております。
機械指令は1989年に制定された89/392/EECが初版になり、1995年から強制適用とされています。 現行版の機械指令は2006/42/ECで、本文と付属書I~XIIで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書Iの安全衛生要求事項になります。 適用範囲は産業の現場で労働者が使用する機械類全般になります。
機械指令は機械類が持つ多くの危険源のリスクに対して、労働者、使用者、家畜、財産の安全確保を行うことを目的にしています。 付属書Iの安全衛生要求事項を遵守することが要され、そこにはいろいろな側面における危険源のリスク低減が要求としてあります。 その適合性を判断するためのツールとして整合規格があり、現在では700を超える数の規格が制定されています。 安全衛生要求事項への対応として、多くの規格のなかから該当する複数の規格を選択し、安全衛生要求事項の内容と共に選択された規格内容を充分理解した上で、その適合性評価を行うことになります。 また、誰もが手にすることのできる一般大衆向け製品の危険源は主に電気に偏りがちですが、機械類はメカ的な損傷の危険をはじめ多くの種類の危険源を対象としており、保守作業では特殊な状況で機械と関わりがあることから、指令や規格で補えない事象も含めて包括的にリスクアセスメントを実施することも要されています。
機械指令への対応では構造要求に合わせて行く作業が9割で残りが安全試験のイメージになります。 規格の要求事項を理解することや、設計に応用していくことに大変悩ましいことも多々ある事が予想されますが、フェイスFaith Inc.では要件の理解と実務設計への展開について設計者と一緒に考え、メーカーに機械安全のノウハウが残るように、より良い機械安全の達成を目指して作業をさせて頂いております。 安全試験は試験機材一式を機械製造現場に運んでそこで試験を実施しています。 設計検証後の各評価レポートの作成、技術ファイルの編集等、機械指令に関わる一連の作業でサポートさせて頂きます。
CEマーキング全般のプレゼン、機械指令のプレゼン、技術打合せ、図面段階での改造と対策構造の考案、実機での構造検証、リスクアセスメントの実施支援、安全試験やEMC試験の実施、評価レポート類の作成、技術ファイルの編集支援等、機械安全に関わる様々な業務をサポートさせて頂きます。 以下、機械指令に関する情報を断片的に紹介します。
EMC指令は1989年に制定された89/336/EECが初版になり、1996年から強制適用とされています。 現行版のEMC指令は2014/30/EUで、本文と付属書I~VIで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書Iの要求事項になります。 適用範囲は電磁波の影響を与える、および受ける機器全般で一部を除いて電気製品全般となり、産業機械類もその対象になります。
EMC指令は製品が持つ電磁波リスクについて、製品から発せられる放出レベルの確認(EMI放射エミッション)と製品に妨害波を与えても正常動作が維持できることの確認(EMS誤動作イミュニティ)を試験で判定します。 構造的な要件はありませんが、スムーズな試験進行を考慮して事前に達成しておくべき構造があります。
EMC試験はEMC試験環境が整った試験サイトに清貧を送り、そこで試験を実施します。 おおかたの製品の場合、EMIで1日、EMSで1日、計2日の試験日程になります。 試験所にはEMCの対策部品も準備されており、NGの場合でもノイズ対策を施しながら結果を吟味していきます。 試験がスムーズに行けばどこの試験所でも差異はありませんが、NGの場合のノイズ対策能力の高い試験所で実施することが一つの選択ポイントにはなります。
機械類のEMC試験については、機械を容易に搬送できないとか、電気容量が大きく外来流体も必要で試験所のユーティリティが機械仕様を満たすことができないとか、ワーク加工や排出物等の理由で、試験所では出来ない場合が多くあります。 機械類のEMC試験は試験機材を機械製造現場に運んでそこでEMC試験を実施しています。 おおかたの場合、EMIとEMSで計2日の試験日程になります。 事前の対策構造についてのコンサルはしていますが、NGノイズ対策が発生する場合でも即時対応によるスムーズな試験進行を実施しています。
CEマーキング全般のプレゼン、機械指令のプレゼン、技術打合せ、図面段階での改造と対策構造の考案、実機での構造検証、リスクアセスメントの実施支援、安全試験やEMC試験の実施、評価レポート類の作成、技術ファイルの編集支援等、機械安全に関わる様々な業務をサポートさせて頂きます。 以下、EMC指令に関する情報を断片的に紹介します。
低電圧指令は1973年に制定された73/23/EECが初版になり、1997年から強制適用とされています。 現行版の低電圧指令は2014/35/EUで、本文と付属書I~VIで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書Iの安全目標になります。 適用範囲はAC電源仕様の機器全般です(家電、音響、情報処理、計測、制御等の電気機器)。 産業機械類も電気が使われますが、機械指令により電気安全もカバーされるため低電圧指令の目標は採用しながらも、指令の運用としては低電圧指令を適用することはありません。
低電圧指令は製品が持つ電気エネルギーによる危険源について、感電、火災、やけどを主体にリスクを低減するための要求であり、構造的な要件と安全試験によりその適合性を確認します。 安全目標への対応として、指令に関連付けされた整合規格のなかから単一の該当規格を選択し、規格内容を充分理解した上で、その適合性評価を行うことになります。
低電圧指令への対応では適切な構造面の達成と安全試験が半々のイメージになります。 規格の要求事項を理解することや、設計に応用していくことに大変悩ましいことも多々ある事が予想されますが、フェイスFaith Inc.では要件の理解と実務設計への展開について設計者と一緒に考え、メーカーに電気安全のノウハウが残るように、より良い電気安全の達成を目指して作業をさせて頂いております。 構造の検証と安全試験につきましては評価用製品をお送り頂き社内試験室で適合性評価を実施しています。 評価レポートの作成、技術ファイルの編集等、低電圧指令に関わる一連の作業でサポートさせて頂きます。
CEマーキング全般のプレゼン、機械指令のプレゼン、技術打合せ、図面段階での改造と対策構造の考案、実機での構造検証、リスクアセスメントの実施支援、安全試験やEMC試験の実施、評価レポート類の作成、技術ファイルの編集支援等、機械安全に関わる様々な業務をサポートさせて頂きます。 以下、低電圧指令に関する情報を断片的に紹介します。
RoHS指令は2002年に制定された2002/95/ECが初版になり、2006年から強制適用とされています。 現行版のRoHS指令は2011/65/EUで、一般的にRoHS IIと呼称され、本文と付属書I~VIIIで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書IIに記載の6種の物質についてで、均質材料単位での含有重量比規制になります。 その後、RoHS IIは改正指令(EU)No.2015/863によりフタル酸エステル類の4種の物質が追加され、対象物質は10種類に拡大しています。 追加の4物質についての注意として、RoHS IIの時点ではCEマーキングの表示と対象製品のカテゴリー編成が行われているだけであり、追加の4物質はその後のRoHS II改正によるものになります。 適用範囲は一般家電製品、医療機器、監視制御機器、工業用機器と段階的に適用時期が与えられ全ての電子電気機器にまで拡大されることになります。
使い捨ての時代において電気電子機器の廃棄は年間に何百万トンにのぼり、その廃棄量は年ベースで数%の上昇傾向にあります。 多くの廃棄物において有害物質の除去なしで廃棄処理されている状況が環境に著しい影響を与えるとして、有害物質の規制が開始されています。 RoHS指令は製品を構成している均質材料(最小単位の部材)に含まれる有害物質を規制するものです。 一製品は多くの部材で構成され、最小単位の部材までさかのぼると多くの部材メーカーがチェーン的なつながることになります。 各部材の加工、製造メーカーは特定された有害物質が非含有であることの証明書を作り、最終セットメーカーは多くの供給元メーカーを管理していくことがRoHS指令への対応になります。
RoHS指令への対応は機械指令やEMC指令の一製品評価とは異なり、組織的な対応が要され、中には分析試験による検証も含まれますが、主には書類管理になります。 フェイスFaith Inc.では各部材の供給やチェーン管理においてRoHS指令に適した作業をサポートさせて頂きます。 以下、RoHS指令に関する情報を断片的に紹介します。
圧力機器指令は1997年に制定された97/23/ECが初版になり、2002年から強制適用とされています。 現行版の圧力機器指令は2014/68/EUで、本文と付属書I~VIで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書Iの安全要求事項になります。 適用範囲は許容圧力0.5bar(0.05MPa)を超える容器、ボイラー、配管、継手、ホース、安全弁、バーストディスク、許容圧力を超えないように保護する部品等になります。
圧力機器指令は圧力機器が持つ流体圧力エネルギーによる危険源について、相対する適切な構造が確保されていることを構造的な要件と試験によりその適合性を確認します。 付属書Iの安全要求事項を遵守することが要され、その適合性を判断するためのツールとして多くの整合規格が制定されています。 非適用とされる機器の範囲も広く、その圧力機器の用途や仕様により指令への該当性を吟味することが要されます。 該当する機器の評価手順は機器の種類、流体の種類、流体の状態をもとに付属書IIのどれかのテーブル(1~9)を選択し、その許容圧力bar、容積L、口径のパラメータをもとに能力区分でカテゴリーI、II、III、IVに分類されます。 一概には言えませんがDN100以上の配管とか50bar・L以上の容器については欧州連合に登録がされたNB検査機関にその型式試験を依頼することになります。 容器が金属溶接で構成される場合は金属の材料証明、材料メーカーの品質保証、溶接手順、溶接士の資格、溶接部の強度試験等の確認が検査機関によって実施されることになります。 NB検査機関は圧力機器の種類によって、また評価モジュールによって対応できる範囲が決められており、欧州委員会のホームページから適切な機関を検索することができます。
圧力機器指令への対応は圧力機器に指令が適用されるのかその該当性判断が最初になります。 カテゴリーIまでの範囲の圧力機器であれば、安全の検証が含まれている他の指令(機械指令や低電圧指令)で評価を行うことで圧力機器指令の適用は無くせることもできます。 カテゴリーII以上の場合は検査機関との作業が要されてきます。 フェイスFaith Inc.では圧力機器指令への該当性確認からNB検査機関との協調作業を含めて圧力機器指令に適した作業をサポートさせて頂きます。 以下、圧力機器指令に関する情報を断片的に紹介します。
リフト指令は1995年に制定された95/16/ECが初版になり、1999年から強制適用とされています。 現行版のリフト指令は2014/33/EUで、本文と付属書I~XIVで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書Iの安全衛生要求事項になります。 適用範囲はビルおよび建造物に恒久的に取付けられる人、および物を昇降させるリフト、およびリフト用の安全部品になります。
リフト指令の適用範囲は機械指令との運用の境界を明確にするため、建設現場のホイスト、機械に取り付く昇降装置、速度が0.15m/sを超えない昇降装置等、いくつかの非適用製品の範囲が設定されていますが、リフト指令でカバーできないリスクについては機械指令の付属書を参照することになります。 付属書Iの安全衛生要求事項を遵守することが要され、構造的な要件と試験によりその適合性を確認します。 その適合性を判断するためのツールとして多くの整合規格が制定されています。 また、機械指令と同様にリスクアセスメントの実施も要されます。 製品の評価手順としてリフトと安全部品では選択できるモジュールが異なりますが、いずれも欧州連合に登録がされたNB検査機関にその型式試験を依頼することになります。 NB検査機関はリフトおよび安全部品の種類によって、また評価モジュールによって対応できる範囲が決められており、欧州委員会のホームページから適切な機関を検索することができます。 適合宣言書もリフトと安全部品では記載事項が異なるため付属書IIを参照して作成する事になります。
リフト指令への対応はNB検査機関との作業が要されてきます。 フェイスFaith Inc.ではNB検査機関との協調作業を含めてリフト指令に適した作業をサポートさせて頂きます。 以下、リフト指令に関する情報を断片的に紹介します。
個人用保護具規則は1989年に制定された89/686/ECが初版になり、1995年から強制適用とされています。 現行版は個人用保護具規則(EU)2016/425で、2018年4月の時点で指令から規則へ変更がされました。 規則は本文と付属書I~Xで構成されています。 本文は主に指令運営の制度についてのルール記載で、技術的要件は付属書IIの安全衛生要求事項になります。 適用範囲は身体の頭の保護具、目の保護具、耳の保護具、作業靴、作業用手袋、防護服、マスク、呼吸器用保護具、人体保持具、落下防止具、スポーツ用保護具、ダイビング機器等で、幅広い分野において一つ以上のリスクから保護を行う製品がその対象になります。
個人用防護具としてカバーされる製品範囲は広く製品が持つリスクの度合いによりカテゴリーI、II、IIIに分類され、その評価モジュールも分類されたカテゴリーI、II、III毎に設定されています。 付属書IIの安全衛生要求事項を遵守することが要され、構造的な要件と試験によりその適合性を確認します。 その適合性を判断するためのツールとして多くの整合規格が制定されています。 また、リスクアセスメントの実施も要されます。 カテゴリーIIとIIIに分類される製品は欧州連合に登録がされたNB検査機関にその型式試験を依頼することになります。 NB検査機関は個人用保護具の種類によって、また評価モジュールによって対応できる範囲が決められており、欧州委員会のホームページから適切な機関を検索することができます。
個人用保護具規則への対応は製品がどのリスクカテゴリーに該当するかが決まれば、評価手順が設定されることになります。 カテゴリーIの製品は設計検証と製造品質の管理は自主管理になります。カテゴリーII以上の場合は検査機関との作業が要されてきます。 フェイスFaith Inc.では個人用保護具規則でのカテゴリー選択からNB検査機関との協調作業を含めて個人用防護具規則に適した作業をサポートさせて頂きます。 以下、個人用防護具規則に関する情報を断片的に紹介します。
アメリカにおける立法制度には連邦議会が決める連邦法、州議会が決める州法があります。 また、市や町や一定の地域(例えばシリコンバレー)が定める条例規制もあり、地域によって独自の規制内容や適用時期が異なる条件で施行されています。 連邦法は通称USC(the United States Code)と呼ばれ、法の実行規則として連邦規則CFR(the Code of Federal Regulations)があります。 規則においては各側面に関連する多くの規格(Standard)が検査機関、工業会等の諸団体から制定されており、法律Code - 規則Regulation - 規格Standardの体系が構成されています。 例えば、連邦法に関連した規制には次のようなものがあります。
連邦法 | 連邦規則 | 規則名称 | 管轄 |
---|---|---|---|
29 USC 651-678 | 29 CFR Part 1910 | 労働安全衛生 | OSHA 労働安全衛生管理局 |
47 USC 151、301-307 | 47 47 CFR Part 15 | 電磁妨害波 | FCC 連邦通信委員会 |
21 USC 351-381 | 21 CFR Part 1040 | レーザー | FDA/CDRH食品医薬品局 |
アメリカでは労働災害の防止と安全で快適な職場環境作りを目的に労働安全衛生法が1970年に制定され、その運営機関として労働安全衛生管理局OSHA(Occupational Safety & Health Administration, U.S. Dept. of Labor)が設立されています。 OSHAは労働省DOLの下位機関であり、規則施行の権限が議会から与えられ、機関自体の規模も大きく、全ての市民や企業に対し大きな影響力を持つ独立機関になります。 取扱い分野は異なりますが同様に独立性を備えた機関として連邦通信委員会FCC、食品医薬品局FDA等があります。
OSHAは労働安全衛生規則29 CFR Part 1910の施行により、アメリカ全土の事業者に対して職場環境の向上にむけて取締り活動を実施しています。 事業者への新たな技術支援、技術指導プログラムの開発、各事業者レベルに合わせた指導対応を実施していたり、事業者にとっては管理事項が緩和される場合や逆にきびしくなる場合もあり、事業者の規則対応度合いを区分することでそれぞれ異なる管理を実施しています。 労働者に安全と衛生が整った職場を提供するための一環として、機械類や労働現場の環境は規則に従わなければなりません。 労働安全衛生規則29 CFR Part 1910は次のサイトで閲覧が可能でいくつかのサブパートで構成されています。
https://www.osha.gov/pls/oshaweb/owasrch.search_form?p_doc_type=STANDARDS&p_toc_level=1&p_keyvalue=1910サブパートDでは階段や手すり、踊り場についての物理的寸法の規定が、サブパートGには換気、防塵マスク、安全靴、塗装ブースや研削盤の排気条件、騒音、無線周波放射の規定が、サブパートOには木工機械や機械式プレス等の特定の機械類についての防護壁や安全距離の規定が、サブパートSには配線、作業空間、防爆、訓練や保護装置についての規定があります。 一つの機械や一つの現場が適用を受ける規則がいろいろなサブパートの一部に分散して記載されていることから該当項目の検索だけでも一仕事な感があります。 また、サブパートによっては規則に関連する規格ANSI、API、ASME、ASTM、AWS、CGA、NEMA、NFPA、SAE、UL、ISO等がリストされていて、サブパートS電気に関連する規格としてアメリカ防火協会NFPAが発行している規格がいくつかリストされています。 一例として、NFPA 70(別称NEC National Electrical Code)はアメリカにおける電気配線要綱の規定で、多くのUL規格はNECを元に作成されていたり、産業機械類の電気部(制御盤+周辺機器)についてもNFPA 70 Article 670 Industrial Machineryに規定があり、そこでNFPA 79 Electrical Standard for Industrial Machineryに適したものが要されています。
労働安全衛生規則 29 CFR Part 1910により、アメリカの事業者には建物の構造を含めて安全と衛生が整った職場作りが要され、安全性が満たされた機械を導入することも規則における一つの要件になります。 規則の取締り対象はアメリカ全土の事業者であり、CEマーキングのように機械の設計製造メーカーを対象としているわけではありません。 労働安全衛生が整っている事業者であれば、事業者側から機械製作メーカー宛てに規則や規格の事前指定があったり、また、事業者によっては何の指定もない場合があります。 アメリカの事業者の規則への取り組みや理解の度合いの違い、また地域における条例内容が異なっていたりすることがその温度差を生じているのかもしれません。 運良く日本仕様のままで稼働している機械もあれば、現地での初期稼働時に電線の張替えやブレーカの交換を行っている機械もありますが、機械製作メーカーは事業者側に規則や規格の指定について事前合意しておくことと、基本的にはアメリカにおける規制を考慮して機械を設計製作することが機械製作メーカーとしての立場、および機械を使う事業者側の立場を手助けすることになります。
労働安全衛生規則 29 CFR Part 1910サブパートSには、電気機器、および配線の認可要件(1910.303)が述べられていて、その認可作業として、1)UL等のNRTL国家認定試験所による認証、2)地域の労働安全衛生係官による電気設備規定を用いた検査、3)特定のユーザーのみで使用される一品一様の機器についてはメーカーの意図する使用において安全が確保されていて地域の労働安全衛生の係官による検査に備えて試験データが保持されている場合が、許容されています(1910.303)。 産業の現場で使用される機械類は一般大衆向けの量産品とは生産体制が異なることからNRTL認証を取得することはほとんどなく、機械が現地に据付けされてからその地域の労働安全衛生係官による検査を受けることで公共の安全が確認されています。 この認可作業を任されているのが地域の労働安全衛生係官AHJ(Authority having jurisdiction)と呼ばれる人達になります。 AHJは自治体における個人、事務所、消防署員、労働局員、保険局員等であり、規則や規格の選択、機械や材料の認可、および機械の初期稼働の許可を与える等の権限が有されています。
AHJは様々な技能を有する人ですが機械安全に特化していない人も含まれ、人によっては評価作業の負担が異なります。 そのような作業内容のバラツキを均一化するためにアメリカ防火協会から現場評価の手順書、NFPA 791 Recommended Practice and Procedures for Unlabeled Electrical Equipment Evaluationが発行されています。 NFPA 791はAHJが適切に機械の検査が実施できるようにその手順や検査項目が示されています。 また、地域の規制や現地事業者の要望により、AHJによる検査の前段階でUL等のNRTLによる機械の検査が実施される場合があります。 この第三者機関による検査のことをフィールド エヴァルエーションと呼んでいて、その検査においてもNFPA 791は手順書の役目をしています。 アメリカでは州、市等、その地域によって安全規制の内容が異なり、第三者機関による検査まで求めていない地域もあります。 アメリカの出荷先の現地事業者を通じて、その地域の規制状況や適用される規格を事前確認しておくことが重要になります。
労働安全衛生規則 29 CFR Part 1910サブパートS、NFPA 70、およびNFPA 791にて、機械の電気部はNFPA 79に適したものが労働安全衛生規則での一つの条件になります。 よって、機械の製作メーカー側ではNFPA 79の内容で機械の電気設計を行うことが要されます。 NFPA 79はIEC 60204-1との整合性を考慮して制定されていますが、アメリカ本来の要求事項も多く含み、NFPAとIECとでは多くの面で相違があります。 NFPA 79は電気設計者向けの規格ですが、AHJの作業手順書として制定されているNFPA 791の内容を以下に示します。 NFPA 79にはマーク認証制度はなく、その対応には製作メーカー毎に温度差があります。 日本国内仕様の機械がアメリカで稼働している状況も多くあるのが実情ですが、少なくとも以下の項目については機械の電気設計時に反映させておくことは必要と考えます。
アメリカにおける機械安全の規制は欧州CEマーキングとは異なり、また、IEC/ISO規格に調和するアメリカの国家規格の整合化は行われていますが、アメリカ独自の要求事項も多くあります。 労働安全衛生規則29 CFR Part 1910の各サブパートは機械設計側に適用されるものは少なく、多くは事業者側での対応事項になります。 産業機械類の場合、機械の設計原則としてISO 12100、制御盤を含めた電装関係はNFPA70、NFPA79、可動部に対する安全距離はISO 13857(安全 距離)、警告表示はANSI Z535シリーズ等を考慮して設計して行くことが適切と考えます。 NFPA 70、NFPA 79への対応では適切な電気構造の達成と安全試験になります。 規格の要求事項を理解すること、および実務設計に応用していくことに大変悩ましいことも多々ある事が予想されますが、フェイスFaith Inc.では要件の理解と実務設計への展開について設計者と一緒に考え、メーカーに電気安全のノウハウが残るように、より良い電気安全の達成を目指して作業をさせて頂いております。 構造の検証と安全試験につきましては試験機材一式を機械製造現場に運んでそこで試験を実施しています。 設計検証後の評価レポートの作成、技術ファイルの編集等、NFPA規定に関わる作業をサポートさせて頂きます。
労働安全衛生規則29 CFR Part 1910には検査機関NRTL(Nationally Recognized Testing Laboratory)による認証を要しているものがあります。 NRTLはOSHAから認定を受けたアメリカの検査機関のことで電気製品の表示でよく見かけるULもNRTLの一機関になります。 現在ではCSA、FM、ETL、NSF等、約20社の民間検査会社がNRTLとして登録されています。 NRTLによる認証が要される製品は39項目で次のような製品があります。
アメリカにおける工業分野の規格は各団体(AMT、ASTM、NEMA、ASME、UL、NFPA等)が独自に審議作成を行っており、それらの規格をアメリカの国家規格として制定しているのがアメリカ規格協会ANSIになります。 国家規格として採択された諸団体の規格は規格番号の前に「ANSI」の名称が入り識別されています。